アマチュアViolin弾きの「独り言」

~思いついたこと、気になることを自由に、気の向くままに~~<そうして中断です>~

今夜も花火が・・・

「いやぁ~。こんなとこで、ようお目にかかりましたなぁ」 
「こんなとこで会えるなんて、ほんまに珍しいことですなぁ」

語るのは義母。
どうやら、ここはヨーロッパのどこかの空港の待合室。


けれど、
現実は、我が家のリビングの長椅子に腰掛けている義母が、
帰宅した私に声をかけてきた時の台詞。


屋外への徘徊は無いが、深夜に起き出し様々な行動をしたり、
通常の生活が困難になって、我々夫婦ではどうにも対応しきれ
なくなっていた時期。
施設に頼み入所をしていたが、たらい回しの合間の数日、次の
施設入所までの我が家での生活。
その時の、義母と私との会話。


京都で一人住まいを元気にしていたが、ある日転倒、入院。
ご多分に漏れず、これがきっかけで認知症が始まった。
引き取らざるを得なくなった。
知り合い、友人、環境、言葉、生活習慣の全てが異なる
関東への引っ越し。
けれど他に術はなかった。
認知症の症状は決定的なものとなった。


義母は教員をしていたから、地域では結構親しい人たちに
囲まれ、積極的に活動をしていた。
けれども、動けなくなった彼女に、それらの事実は最早、
役立つことは無かった。


今夜も、昨夜に続き、どこかで花火が上がっている。
夏の夜の華々しい「花火」。
その華やかしい音を聞きながら、
何故か、義母との会話が浮かんできた。
それは、我が家で交わした最後の会話だった。